襖あれこれ

各種ふすまの呼び方

襖・ふすまの構造
昔は「障子」という言葉が広い意味で用いられていたため、「襖障子」と呼ばれていました。 現在では、障子と襖は別のものとして区別され、襖は部屋の間仕切りや押し入れなど、実用とインテリアを兼ねた建具として使われています。
襖は、襖紙(上貼り)・下貼り・引手・縁・骨などで構成され、最近では、その材質もデザインもさまざまです。
なお、襖は普通「本」の単位で数えます。

引き方別の呼び名

ふすま・襖
■片引き

1本の溝に1本の襖が入るもので、「一本引き」ともいう。
ふすま・襖
引き分け
1本の溝に2枚立てとして入れたもので左右に引き分けるもの。
ふすま・襖
引き違い
2本以上の溝に入れ、引き違えることができるもの。

開き方別の呼び名

片開き襖・片開きふすま
片開き
1本の襖の片側に丁番を取り付け、その反対側に取手を付けたもので、開閉して使用する襖。
両開き襖・両開きふすま
両開き
2本の襖を手前に引いて使用する襖。観音開きと呼ばれるものもある。
観音開き襖・観音開きふすま
観音開き
2枚、3枚、あるいは4枚ずつ襖の左右に吊られていて、折りたたんで開くもので仏壇に多く使われている。

ふすまのはめ込み方

すべて手前側が主室側です。・引き違い召し合わせ部はマス縁。
・4枚立及び両開きの突き合わ せ部は定規縁を使用。
・□印はドブ縁。 ・■印は引手位置。
ふすま はめ方
1本引き
襖 入れ方
3枚立て3本溝
襖 外し方
2本立て
襖・ふすま
3枚立て2本溝
襖・ふすま
4枚立て
 

用別途名称

押入れ 天袋 地袋 鴨居上■間仕切り(中仕切り)=取合

部屋と部屋とを仕切るために使われる襖。襖の両側が部屋に面するため両面に上貼りが貼られる。 このため、「両面」「両面貼り」とも呼ばれる。

■押入れ

片側だけが部屋に面するので、片面のみ上貼り(裏は裏貼り)が用いられる。このため「片面貼り」とも呼ばれる。

■鴨居上(かもいうえ)

押入の上の小襖のことで、現在では、「天袋」とも呼ばれる。

■天袋・地袋(てんぶくろ・じぶくろ)

床の間の脇床の上段・下段に取り付けられる小襖のことで、上段のものを天袋、下段のものを地袋と呼ぶ。 縁は細縁が用いられることが多い。

襖の持つ柔かな風合いと佇まいを見直し襖の良さを楽しみましょう

「襖は和室にだけあるもの」と思っておられる方も多いのではないでしょうか。平安時代から日本の住まいで大きな役割をはたしてきた「襖」。あまりにも身近で、現代の洋室中心の住まいでは忘れがちだった「襖」。実は機能的で、狭い日本の住宅事情ではとても便利な間仕切りでもあります。襖は、日本の気候にあった和紙という優れた素材を使うことで機能性と装飾性を併せ持っています。狭いと言われる日本の住宅で、引戸は大変合理的で小スペース化を図れる機能性の高い間仕切りです。

ここ10数年、日本の住宅デザインは「シンプル」「モダン」というキーワードのもとに洋室中心の空間が多く生み出されてきました。それに合わせ、襖も壁の一部として溶け込む面として捉えられ、装飾性を排除した「目立たない襖」が多くなっていきました。しかし、襖のデザインには、本来、大変バリエーション豊かなものです。襖には襖紙、椽、引出があり、それぞれに素材や色、柄、形は多様でその組み合わせは数限りなくあります。

また、最近の日本の住宅デザインの傾向として「オリジナリティ」や「装飾性」が言われていますが、まさにその空間を飾るにふさわしい「豊かな装飾性のある襖」が、素敵な住まいづくりに大きく貢献してくれるのです。そして、襖の素材である和紙は呼吸をしています。調湿作用のある自然素材なのです。そのなかでも手漉きの和紙は年月による劣化が少なく、パルプ紙に比べると格段に丈夫で長持ちします。また、化学糊を使わない施工は、アレルギー問題等の住まいの環境を考える上でも大切なことです。

襖用の素材は驚くほど種類があります。それらをどのように組み合わせるか、デザインするかで住まいにあった一点物の襖を作ることが出来ます。襖紙のなかには、色や柄の組み合わせを選んで作るオーダーメイドの商品もあります。また、畳と一緒で襖のサイズも自由にデザインすることが可能です。丈長や幅広の襖で一枚の襖紙で貼れない場合は、和紙を貼り継ぐ「継ぎ貼り」という方法を用います。継ぎ目が意匠的にも美しく、どのような建具寸法にも対応でき、襖の可能性を広げます。

さらに、和室がなくても、洋室に合う建具として襖を制作ことも可能です。例えばシンプルな洋間の間仕切りとして、太鼓貼りの椽なしのモダンな引戸はいかがでしょう。優しく光を透過させる和紙を使えば障子やランプのシェードのような効果を楽しむことが出来ます。洋室と和室が隣り合う間仕切りの場合、洋室との調和を考えて互いに響き合うようなデザインにすることが成功の秘訣です。季節や住まい方の変化に合わせて模様替え出来るのも魅力で、何度でも貼り替えが出来、メンテナンスがしやすいのも襖ならではです。

国宝の襖絵と現代の絵師による襖絵制作について

「京都妙心寺退蔵院方丈襖絵プロジェクト」をご存じでしょうか。これは妙心寺退蔵院と、京都造形芸術大学が共同で、文化財の保存と若手芸術家の育成目的にしたプロジェクトです。 現在、退蔵院には、安土桃山時代の絵師・狩野了慶によって描かれた国の重要文化財の襖絵が現存しています。しかし、1600年初頭に描かれたものなので、損傷が激しく、普段は取り外して保管しています。 一般的に、文化財を保有する寺社では、代わりに複製したものや、何も描かれていない無地の襖を入れて保存しています。

 妙心寺退蔵院では、文化財の代わりになる無地の襖に、若手芸術家の手で新たに水墨画を描かせるという、これまでに例のないまったく新しいプロジェクトを発足させました。 400年前、大きな寺社や各地の武将は専属の絵師を雇い、彼らに襖絵を描かせていました。彼らはそこに住み込み、修行に励みながら精神修養をし、多くの傑作を襖に描き、後世に残してきました。今回のプロジェクトでは、当時と同じ手法を襖絵に用いて現代によみがえらせました。

 このプロジェクトは、今生きる若い芸術家を育成し、芸術家として世界にはばたく最初の一歩の後押しをするという重要な意味もあります。 また、既存の文化財(退蔵院襖絵)を保全し、同時に新しい遺産をのこすという新たなモデルを作り、京都を「芸術の都」として世界にアピールしていこうと考えているのです。 今回、この襖絵を描く絵師として選ばれたのが、京都造形大学院卒の村林由貴さんでした。禅の修行をこなしながら、水墨画を学び、襖絵の制作に取り組みました。

 絵師は400年前と同じように、完成まで寺に住み込み、日々修行を重ね禅への理解を深めながら、襖絵制作を進めました。退蔵院を拝観される方にも、襖絵の制作活動の様子をまじかに見られる機会も作られました。後世に残っていく襖絵という芸術が、いかにして作られていくのかを、目で見て感じることができる機会でした。どのような襖絵が出来上がるのか、作品もさることながら、その過程も楽しむことができたプロジェクトでした。 

 雑誌「ミセス2013年12月号」では、「退蔵院方丈襖絵プロジェクト本堂の襖絵完成」と題し、6ページにわたり特集が組まれました。また、雑誌「ミセス」では、2012年7月号と2013年1月号においても、プロジェクトについて紹介されており、襖絵の制作過程を写真で実感することができます。 襖絵とは、文字通り襖に描かれた絵のことで、日本建築で用いられ、時代を経たものの中には、美術品として価値の高いものも多いです。この襖絵も将来、そうなるかもしれません。